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「般若心経」と「認知心理学」
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西洋で人気のある認知心理学は、東洋の仏教と極めて似た考え方です。例えば、「般若心経」の中に出てくる「色受想行識(五蘊)」は、脳の情報処理システムそのものと言ってもいいものです。また、「眼耳鼻舌身意」は人間の知覚を表しています。
認知心理学では、「眼(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)、身(触覚)」による外部からの情報入力の研究が主体でしたが、今は、「ルミネーション」など、思い出すことによる、内部入力に焦点が当てられるようになっています。つまり、「眼耳鼻舌身意」の「意」に相当するものです。
東洋の瞑想には、体の感覚や、味覚などに意識を集中させるものがあります。おそらく「眼耳鼻舌身意」のうち「眼耳鼻舌身」の五感に意識を集中させ、それらの情報処理で頭の中を満たすことによって、思い出すことによる「意」の要素が入り込む余地をなくしているのだろうと思われます。脳の中で嫌なことを思い出す余地が減れば、気持ちは軽くなりますし、ストレスの慢性化を避けられます。
西洋で、マインドフルネスという仏教を基にした対応法が盛んに研究されているのは、仏教の知恵には、認知心理学や脳科学を包含したような深い概念が存在していることが影響していると考えられます。認知心理学の研究が進めば進むほど、マインドフルネスなどの東洋系の知恵が注目されるはずです。