日本ではまだあまり取り組みが進んでいませんが、国際的なスタンダードでは、メンタルヘルス対策のカギを握るのは「スティグマ対策」とされています。
スティグマとは?
偏見や恥ずかしさなどのことを言います。
スティグマは主として3つあるとされています。1つは、精神疾患の人に対する偏見などです。2つめは、自分がメンタルヘルス不調になったときに、「こんなふうになるのは自分が弱いからだ」「恥ずかしいことだ」「汚点だ」といったように自分を責めてしまったり、周囲の目が気になって病院になかなか行けなかったりするというタイプのものです。3つめは、精神疾患であるために差別的な待遇を受けるなど、社会構造にも関連するものです。
これらのうち、職場のメンタルヘルス対策で最も重視されるのは、2つめの、自分の行動に影響をもたらすスティグマ(セルフ・スティグマ)です。
セルフ・スティグマを持っていると、「助けを求める」という行動が阻害されがちになります。「心の問題で人に相談するなんて、恥ずかしいことだ」との思いから、自発的な相談を嫌がり、「医師やカウンセラーに相談する」といったことが遅れてしまうのです。
欧米では、職場のメンタルヘルス対策としてEAPと呼ばれる従業員支援プログラムがあり、いつでも相談できるように制度が整えられています。また、地域にも多数の精神科医やカウンセラーなどがおり、相談制度自体はかなり整っています。
しかしながら、制度がいくら整っていても、スティグマのために自発的相談を避けるという行動が多く、結果的に利用率が高まらず、制度の効果を発揮できないことが大きな課題となっています。特に、男性、そして、「強くなければいけない」と考えられがちな国防、警察、消防などの職場で、スティグマを持つ人が少なくないようです。そのため、自発的な利用を高めるための「スティグマ対策」が非常に重視されているのです。
日本の職場においても、社内の相談窓口の設置やEAPプロバイダーとの契約など、相談制度自体は整備されつつあります。しかしながら、「利用率が高まらない」という大きな課題をやはり抱えています。
器だけ整備されていても、それが利用されなければ十分な効果は現れません。自発的な相談を妨げる要因になりがちな「スティグマ」への対策が重要なカギを握っています。