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組織を強くする 職場のストレスマネジメント
著:(雑誌掲載記事)


<連載 第10回>
みんなの「予測」が揃うとチームのストレスが減る


予測できているとストレスをあまり感じない
手術室でのチームワークも「予測」がカギ
ストレス下でパフォーマンスを上げるには?
チームの連携をよくしてストレスを減らす


予測できているとストレスをあまり感じない

 現代社会においては、ストレスから逃れて仕事をすることはほぼ不可能です。時間がない、予算がない、絶対にミスは許されない、危険を伴う、など様々なストレスを抱えながら仕事の成果を上げることが求められています。

 そこで、今回はストレス状況の中で仕事を成功させている人たちの例から、ストレスへの対応法を探ってみたいと思います。

 何年か前に、名医と呼ばれている二人の心臓外科の先生に話を伺ったことがあります。心臓外科医は患者さんの命がかかった強いストレスの中で仕事をしています。

 大きなストレスが生じたときの対応法を伺ってみようと思い「手術中に予期せぬことが起こったときには、どうされているんですか?」と聞いてみました。

 すると、一人の先生から「予期せぬことが起こってはいけないんです」と即座に言われました。心臓手術で予期せぬことが起これば死に直結します。それが起こらないようにあらゆることを事前に予測して対応する必要があるというのです。

 様々なことをシミュレーションし、予測をしておくと、あらかじめ頭の中で準備ができているのでストレスをそれほど感じないのだそうです。事前の「予測」がストレスへの対応に大きなカギを握っていることを教えてもらいました。

 万一、予想外のことが起こったときには、少し深呼吸をしたり、目を閉じたりして、頭をクールダウンさせて考えると冷静に対処できるとのことでした。



手術室でのチームワークも「予測」がカギ

 もう一人の先生は「心臓外科医は、看護師さんの腕に支えられているんですよ」とおっしゃっていました。

 手術中に看護師さんのほうに手を出すと、何も言わなくても、手の上に必要な器具を乗せてくれるのだそうです。「看護師さんが手術したほうが、うまいんじゃないかと思うくらいですよ(笑)」と、看護師さんの優秀さを教えてくれました。

 プロの看護師さんは、次にどの器具が必要かを予測して事前に用意しているようです。

 執刀医と看護師の2人の予測が「次はこうなる」と一致しているときには、動きがシンクロしてチームのパフォーマンスが高まります。
 その反対に予測が一致していないと、動きがバラバラになってチームのパフォーマンスは低下します。

 名医を支えているのは、看護師さんの予測力であり、チームの力であることを教えてもらいました。



ストレス下でパフォーマンスを上げるには?

 1990年代後半に、アメリカ海軍がストレス下での効果的な仕事の仕方について、20億円ほどの予算をかけて研究した資料が発表されています。

 それによれば、チームメンバーの「予測」を一致させることに重点を置いたトレーニングが提案されています。

 例えば、敵機が猛スピードで迫ってくるストレス状況の中でも、チームメンバーが同じことを予測していると、みんなの連携がよくなり、チームのパフォーマンスが高くなるという実験結果が出ています。

 では、予測を一致させるためにはどういうことが必要なのか。それには、普段のコミュニケーションを増やし、仕事についての共通認識を持つようにすることが重要とされています。

 「シェアード・メンタルモデル」と呼ばれていますが、共通認識を持ち、考え方のパターンが共有化されると、「次はこうなるだろう。他のメンバーもそう思っているだろう」と予測が一致して、協調作業がうまくいきます。

 ときには、予測のしにくい異常な事態が発生することもあります。

 そのようなときには、上司は「現在どういう状況か」というアップデート情報を部下に繰り返し伝える。部下のほうは、上司が必要としそうな現場の情報を上司に伝え続ける。そういうコミュニケーションを増やすと、未知の状況に出くわしても、上司と部下の予測が一致しやすくなり、チーム全体でよりよい方向に持って行くことができるようです。

 すべてのことを予測できるわけではありませんが、チームメンバーの予測が揃うようにチームづくりをしていくと、ストレスがかかる状況の中でも、チーム全体のパフォーマンスは高まっていきます。
 チームの連携がスムーズになれば、人間関係上のストレスも発生しにくいものです。


チームの連携をよくしてストレスを減らす

 チームワークは、およそ次のような段階を経て向上していきます。チームがどの段階にあるのかを考えてみましょう。


1. 小さなことでも話し合い、コミュニケーションを増やす

2. 仕事への「共通認識」ができ始める

3. 仕事に対する考え方のパターンが共通化されてくる(シェアード・メンタルモデル)

4. 仕事に対するお互いの考え方の違いもわかり始める

5. 「この人ならこう考えるだろう。この人ならこう動くだろう」と予測ができるようになる

6. お互いの考えや動きをある程度予測できるので、連携がよくなり、チームの成績が上がる


 ポイントは5番目です。あなたの職場では、お互いの動きをある程度予測できるでしょうか。

 予測できない人がいるときには、お互いにストレスが高まりやすいですから、コミュニケーションを増やして言葉できちんと確認し合うことが、職場のストレスを減らすために大切になります。

東京建設業協会発行 『Terra』 2015年8月号掲載
 <pdf版はこちら>
*pdf版は若干内容が異なることがあります。


[ 職場のストレスマネジメント ]

目次








 



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