わかりやすい「バスタブ・モデル」
ストレスについての、とてもわかりやすいモデルがありますので、ご紹介します。「バスタブ(浴槽)モデル」と呼ばれるもので、2004年頃にネルソンとシモンズがバスタブを比喩に用いて提唱しました。
「バスタブ・モデル」は、アメリカ陸軍士官学校のストレス教育の中などで用いられています。バスタブ・モデルは、中高生、大学生にストレスのことを理解してもらうときに、一番わかりやすいのではないかと思います。
みなさんは、どうやってお風呂を楽しみますか?
■お湯と水をどう調節しますか?
■お湯の量をどう調節しますか?
■お湯の量をどう調節しますか?
お風呂のことを思い出していただくと、「バスタブ・モデル」の考え方がわかりやすくなります。
2つのタイプの「ストレス」
「バスタブ・モデル」は、ストレスを総合的にとらえるモデルです。
まず2つのタイプのストレスからご説明します。
一般的には、嫌な気持ちやイライラ感など、不快な気分が引き起こされたときに「ストレスを感じている」といった言葉が使われます。
しかし、ストレスには、「不快ストレス(嫌なストレス)」とともに、「快ストレス(良いストレス)」と呼ばれるものがあります。
不快ストレス(distress)
「不快ストレス」とは、イライラしたり、怒りが出たり、落ち込んだり、悲しくなったりするなど、ネガティブな気持ちが引き起こされた状態です。
「不快ストレス」とは、イライラしたり、怒りが出たり、落ち込んだり、悲しくなったりするなど、ネガティブな気持ちが引き起こされた状態です。
快ストレス(eustress)
「快ストレス」とは、自分の気持ちがワクワクしたり、意義・意味を感じたりして、ポジティブな気持ちが引き起こされた状態のことを指します。
ワクワクした楽しい気分のときは、ある種の興奮状態にあり、血圧が上がったり、心拍数が増加したりしています。心身には何らかの負荷がかかっていますので、うれしい状態のときも、一種のストレス状態と考えられています。
「快ストレス」とは、自分の気持ちがワクワクしたり、意義・意味を感じたりして、ポジティブな気持ちが引き起こされた状態のことを指します。
ワクワクした楽しい気分のときは、ある種の興奮状態にあり、血圧が上がったり、心拍数が増加したりしています。心身には何らかの負荷がかかっていますので、うれしい状態のときも、一種のストレス状態と考えられています。
ネガティブな面とポジティブな面の両面がある
「不快ストレス=ネガティブ」、「快ストレス=ポジティブ」、と思われがちですが、必ずしもそうではないところが面白い点です。「不快ストレス」にも、ポジティブな側面があり、「快ストレス」にもネガティブな側面があります。
「不快ストレス」によって・・・
「不快ストレス」がたまってくると、体や心の不調を招き、「疾病」につながることがあります。ストレスは、免疫機能を低下させると考えられており、「ストレスは万病の元」と言われることもあります。
しかし、「不快ストレス」は、苦しさやつらさを乗り越えることで、心の「成長」や「豊かさ」につながるというポジティブな側面も持っています。古来から、試練を乗り越えることで人間は成長する、と言われてきました。
「不快ストレス」がたまってくると、体や心の不調を招き、「疾病」につながることがあります。ストレスは、免疫機能を低下させると考えられており、「ストレスは万病の元」と言われることもあります。
しかし、「不快ストレス」は、苦しさやつらさを乗り越えることで、心の「成長」や「豊かさ」につながるというポジティブな側面も持っています。古来から、試練を乗り越えることで人間は成長する、と言われてきました。
「快ストレス」によって・・・
「快ストレス」は、楽しさや充実感などをもたらしますので、心の「成長」や「豊かさ」につながります。
しかし、どんなに良いことでも、行きすぎればネガティブな面が出てきます。
おいしいものを食べた場合には、気分は楽しくなりますが、食べ過ぎれば、胃痛、肥満、生活習慣病など、病気や不調につながることがあります。
楽しい遊びも、度がすぎれば、仕事や学業に支障を来したりすることがあります。
「快ストレス」も、度が過ぎると、「疾病」や「困難」につながることがあります。
「快ストレス」は、楽しさや充実感などをもたらしますので、心の「成長」や「豊かさ」につながります。
しかし、どんなに良いことでも、行きすぎればネガティブな面が出てきます。
おいしいものを食べた場合には、気分は楽しくなりますが、食べ過ぎれば、胃痛、肥満、生活習慣病など、病気や不調につながることがあります。
楽しい遊びも、度がすぎれば、仕事や学業に支障を来したりすることがあります。
「快ストレス」も、度が過ぎると、「疾病」や「困難」につながることがあります。
ストレスは、「時間」が経つと、「ポジティブ→ネガティブ」「ネガティブ→ポジティブ」と変化することがあります。「ストレスの結果は変化する」と捉えるのが、新しい考え方です。
バスタブのお湯の温度は、時間が経つと冷たくなりますよね。それと似ています。
どうやって温度調節をする?
バスタブに入れる「水」と「お湯」ををストレスに置き換えて考えてみましょう。
蛇口からお風呂に入れる「水」を「不快ストレス」、「お湯」を「快ストレス」と考えてみて下さい。
バスタブのお湯をちょうど良い温度にするには、「水」と「お湯」の蛇口をひねって温度を調節しないといけません。
「水」をたくさん入れすぎると、冷たくて、お風呂に入れなくなります。熱い「お湯」をたくさん入れすぎると、熱くて、お風呂に入ることができなくなります。
水(不快ストレス)と、お湯(快ストレス)をちょうど良く入れないと、自分にとって最も気持ちのよい温度をつくることはできません。
「バスタブ・モデル」は、不快ストレスと快ストレスを調節しながら、ちょうど良い温度にしていくことが大切であるということを示しています。
例えば、嫌なこと(不快ストレス)がたくさんあった場合には、何らかの形で、楽しい経験(快ストレス)を加えていくことが有効と考えられています。楽しい経験を加えていくと、不快なストレスの度合いが緩和され、冷たい水が少しずつ温まっていくように、気持ちの良い温度に近づけていくことができます。
逆に、あまりにも楽しいこと(快ストレス)ばかり続いた場合には、浮かれてしまったり、気がゆるんだり、調子に乗って大やけどをしてしまったりして、長期的に見て、好ましくない結果をもたらすことがあります。
適度に不快ストレスを持つことが、気のゆるみを引き締めてくれる場合があります。お風呂を出るときに、あえて「水を浴びる」人もいますね。
どうやってお湯の量を調節する?
快適な状態でお風呂を楽しむには、バスタブの中に、ちょうど良い量のお湯を入れておかないといけません。
お湯を入れすぎれば、バスタブから溢れてしまいます。
水(不快ストレス)とお湯(快ストレス)が、バスタブの中に入りすぎないようにし、もし、入りすぎたら、ときどき排水口から流して捨てることが必要になります。ストレスがあふれないように、時々排水口から抜いてやりましょう。
ただ、排水口の大きさは決まっています。全部を一気に排水できるわけではありません。その点も考慮することが大切です。
「バスタブ・モデル」がストレス・コントロールのヒントになる
バスタブのイメージをもとにすると、ストレスのコントロール法として、次のような考え方ができます。
ストレス対処の方法は・・・
■ストレスがたまりすぎないように、蛇口を締める。
(ストレスの原因を取り除く、嫌なことから離れる・・・)
■ストレスがたまりすぎたら、排水口から抜く。
(適度にストレス解消する・・・)
■お湯が冷たくなってきたら(嫌なことが増えたら)、温かいお湯(快適なストレス)を入れる。
(趣味を楽しむ、遊ぶ、希望を持つ・・・)
■お湯が熱くなってきたら(度が過ぎて気分が浮かれそうになったら)、水(不快ストレス)を入れる。
(難しい課題にチャレンジする、勉強をする・・・)
■ストレスがたまりすぎないように、蛇口を締める。
(ストレスの原因を取り除く、嫌なことから離れる・・・)
■ストレスがたまりすぎたら、排水口から抜く。
(適度にストレス解消する・・・)
■お湯が冷たくなってきたら(嫌なことが増えたら)、温かいお湯(快適なストレス)を入れる。
(趣味を楽しむ、遊ぶ、希望を持つ・・・)
■お湯が熱くなってきたら(度が過ぎて気分が浮かれそうになったら)、水(不快ストレス)を入れる。
(難しい課題にチャレンジする、勉強をする・・・)
みなさんは、快適にお風呂に入るために、「水」と「お湯」をどのように調節し、どのように「排水」しているでしょうか。
翌日のことも思い出してみてください。お風呂に入った翌日は、お湯は冷たくなっています。そんなときに、少し水を捨てて、お湯を継ぎ足して入ることもあるのではないかと思います。
「嫌なストレスを少し流したうえで、楽しいことを取り入れる」というようなイメージです。そうすると、再び快適にお風呂に入ることができます。
ストレスをコントロールするために、お風呂をヒントにしてみてはいかがでしょうか。
(Photos: iStockphoto)