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職場のメンタルヘルス
著:
『プラントエンジニア』誌 2010年12月号掲載


<連載 第9回>
「声かけ」と「情報共有」で人間関係を強化する


コミュニケーションの「量」が人間関係を向上させる
短い「声かけ」で、人間関係の基盤を作る
「情報の共有」で、人間関係を強化する
孤立化のリスクを避けることも大切


コミュニケーションの「量」が人間関係を向上させる

 今回は、マネジメント・スタンダード6項目のうち、残りの項目「リレーションシップ」について見ていきます。

 「リレーションシップ」とは、良好な人間関係づくりのことです。

 人間関係づくりの重要性については、よくご存じの方が多いと思いますが、ここでは、メンタルヘルス面から見たポイントを3つ挙げておきたいと思います。

 1つは、コミュニケーションの「量」です。

 メンタルヘルス不調になった人の中には、「仕事が忙しくて、職場で誰かと話をしている余裕すらなかった」という人がけっこういます。「上司に相談しようと思ったけれど、忙しそうだから、個人的なことを持ちかけるのは気が引けた」という人もいます。上司のほうも「忙しく働いてもらっている部下たちに、何度も話しかけるのは申し訳ない」と、気を遣ってしまうことがあるようです。

 上司と部下が普段からよく会話をしていれば、上司は部下の不調に気づきやすくなり、部下も上司に相談しやすくなります。
 反対に、普段の会話が少ないと、不調が見逃されたり、不調を悪化させてしまったりする可能性が高くなります。

 不調を予防するための良好な人間関係を築くには、コミュニケーションの「質」と「量」が決め手となりますが、現在の職場の状況は、コミュニケーションの「質」を問う以前に、「量」が減ってしまっているケースが数多く見受けられます。



短い「声かけ」で、人間関係の基盤を作る

 忙しくて時間が足りない中で、簡単にできるコミュニケーションとして、「声かけ」があります。海外では「クイック・インフォーマル・チャット」と呼ばれることもあります。

 「クイック」という言葉からわかるように、短い会話です。会話の内容は、仕事とは関係のない「インフォーマル(非公式、私的)」なことのほうが、効果的とされています。仕事以外の雑談的な会話をときどき行うことが、人間関係を築くうえでは重要なのです。

 毎日の「おはよう」「お疲れ様」などのあいさつのときを利用して、たまには「今日は暑いね」とか「昨日のサッカー見た?」といった身近な話題を付け加えていくと、比較的スムーズに短い会話を行うことができます。

 声をかけるときには、「○○さん」「○○くん」と、名前を添えると、いっそう効果的です。名前を添えることで、その人の存在感を認めてあげることにもつながります。

 声かけや短い会話は、数秒〜1分程度ですむものですから、忙しくても、できないことはないはずです。管理職の方は、「すべての部下に1日1回は話しかけよう」と心がけておくと、コミュニケーションの「量」が増え、リレーションシップを良好に保つ基盤となります。



「情報の共有」で、人間関係を強化する

 2つめのポイントは、「情報の共有」です。

 仕事をするうえでは、十分な業務情報を持っていないと、仕事が行き詰まって、ストレスが生じることがあります。上司が部下に対して、必要な情報をきちんと伝えることが、仕事を円滑に進め、情報不足によるストレスを軽減させることにつながります。
 また、部下が持っている現場の情報を丁寧に聞いてあげれば、部下は「自分の話を聞いてもらえた」と感じてくれます。

 このようにして、情報共有を心がけていくと、人間関係が少しずつ強化されていきます。

 一般的に、「秘密」を共有している間柄は、かなり密接な人間関係と考えられています。業務や個人的なことに関して、「二人しか知らない情報」の共有にまで至れば、人間関係のつながりはいっそう強くなっているはずです。



孤立化のリスクを避けることも大切

 3つめのポイントは、孤立を防ぐことです。

 人間関係のストレスは、関係が密接過ぎて生じる場合もありますが、その反対に、関係が乏しいために、生じる場合もあります。

 職場内で孤立することは、精神的に最もつらい状況の一つです。寂しい気持ちや不安感が高まり、心の不調が起こりやすくなります。

 また、一人だけ情報を伝えてもらえなかったり、誰からも口を聞いてもらえなかったりすると、次第に仕事の成果が下がっていき、周囲からの視線がますます厳しくなるという悪循環も生まれます。

 メンタルヘルスの観点から言いますと、「孤立」は一番リスクの高い状況ですから、管理職の方は、職場で孤立している部下がいないかどうかを、きちんと確認し、対処していくことが必要です。

 なお、工場内においても、オフィス内においても、外出先においても、一人で行う業務が多いと、他の人と話をする機会が減って、孤立化が進む可能性があります。
 欧米では、「ワーキング・アローン(working alone)」の状態と呼ばれ、安全衛生上、管理者は特に気をつけなければいけないこととされています。一人だけで業務を担当していると、調子が悪いときに、他の人に頼ることができず、不調を悪化させてしまうこともあります。

 部下に単独での業務を行ってもらうときには、定期的に状況を確認し、常にフォローをしていくことが必要です。

 また、普段から、たくさん声をかけ、情報共有を心がけていくことも、孤立化を防ぐ有効な手法となります。



<追記 2015年> チームのシンクロのためにも

 「情報の共有」は、チームメンバーの動きをシンクロさせる効果もあります。動きがシンクロすると、コーディネーションが良くなって、チーム・パフォーマンスが高まります。

<関連記事 雑誌『Terra』掲載>

みんなの「予測」が揃うとチームのストレスが減る

『プラントエンジニア』誌 2010年12月号掲載
 <スキャンpdf版はこちら>
*若干内容が異なることがあります。


[ 職場のメンタルヘルス ]

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