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  私たちのつとめは成功ではない。失敗にも負けずさらに進むことである。 ( スチーブンソン )
パーソナル プロフェッショナル
 今欧米で注目されているのは、「マインドフルネス」などの東洋系のストレスケアです。

 欧米で人気のある認知心理学も、仏教の概念と、とても似た要素を持っています。

 「西洋科学の知見」と「東洋的な知恵」との融合がストレス対策として注目されています。

 瞑想は心を穏やかに・・・


 ストレス下のミスを防ぐ・・・ 
 ストレス分野で一番ホットな研究は、「ストレスと認知」です。

 もともとは防衛・航空宇宙分野の安全対策として始まった研究です。ストレスが強いと、状況判断ミスが起こりやすく、事故につながることがあります。

 今、こうした研究のビジネスや医療への応用が始まっています。


お知らせ & メッセージ

トップページをリニューアルいたしました。

 ストレスチェック(認知編)を掲載しましたので、どうぞご利用ください。

 また、認知心理学などから、新しいストレス情報を追加いたしました。(2014年10月17日)

最近のストレス・お悩み 相談

 ストレス・お悩み、うつ状態、いじめ、パワハラなどを相談・応援するコーナーからピックアップしています。
不倫をして悩んでいます(10/26) (2票 0件)
誰にも必要とされていないように感じます(10/25) (86票 0件)
<1日1件ほど掲載中>  

ストレス・チェック(認知編)
 ストレスが認知(脳の情報処理)に影響を及ぼしていないかチェックしてみましょう。
全く
ない
たまに
ある
時々
ある
頻繁に
ある
 
書類や本などを読んでも頭に入ってこない
覚えていなければいけないことを忘れてしまう
仕事や生活で、ミスをしてしまう
アイデアを考えようとしても、浮かんでこない
全く
ない
たまに
ある
時々
ある
頻繁に
ある
 
新しいことは、あまり考えたくない
考えること自体がわずらわしいと思う
考えが堂々巡りになって物事を決められない
判断や選択を間違えたと思うことがある

今のストレス度は?
非常に低い 低め 中程度 高め 非常に高い










パーソナル  <キーワード> プロフェッショナル  <キーワード>

   

<キーワード> リフレーミング

 ストレスを感じているときには、視点を変えて見てみると、ストレスが減少することがあります。たとえば、雨が降ったときに(豪雨は別ですが)、「嫌な雨」と見るか、「恵みの雨」と見るかは、見る人の視点によって違ってきます。「嫌な雨」と見ていたのを「恵みの雨」という視点で捉え直してみると、ストレスが和らぐことがあります。
 捉え方のフレーム(枠組み)を変えて見直してみることは、「リフレーミング」と呼ばれています。





<キーワード> 進化心理学

 リフレーミングの一つとして、進化の視点があります。

 「ストレスが、なぜ人間の心身に備わっているのか」という視点から捉えなおしてみるものです。

 ストレス機能は、4億年ほど前の魚類時代にその原型があると考えられており、それが両生類、爬虫類、哺乳類、人類へと進化しても維持されてきました。もし、不要な機能であれば、数億年の間に退化して消えてしまってもおかしくありません。それが維持されてきたのは、生き残りに不可欠な機能だからだと考えられています。

 生物は、捕食者(外敵)と遭遇したときにすぐに対応できるようにストレス機能を身につけてきました。外敵遭遇時の警報装置のようなものです。警報が鳴り響くことで、逃げたり、戦ったり、死んだふりをしたりという行動が生まれて、難を逃れてきました。

 もし、人間にストレス機能が備わっていなかったとしたら、人類ははるか大昔に絶滅していたことでしょう。

 ストレス・システムは魚類以降の生物の生き残りを支えてきた根幹のシステムです。



 

<キーワード> 急性ストレス反応

 シマウマは捕食者ライオンに出遭うと、危険を感じ、危険を逃れようとします。これがストレス反応のベースとされるものです。

 呼吸を増やして、酸素を多く取り入れ、手足の筋肉にたくさん血液を送り込んで、筋肉の働きを活性化させます。逃げたり、戦ったりしやすくするためです。ウォルター・キャノンは、これを「闘争・逃走反応(fight-or-flight response)」と呼びました。

 ストレス時には、呼吸数が増え(息がハーハーとする)、心拍数が増え(心臓がバクバクする)、血圧が上昇する、などの反応が起こりますが、これは、捕食者から逃れる、生き残りのための反応で、「急性ストレス反応」と呼ばれています。

 クロード・ベルナールの提唱した「ホメオスタシス(体の内部環境を一定に保つ恒常性維持)」に対して、ブルース・マキューアンは、急性ストレス反応を「アロスタシス(体を変化させることで適応するシステム)」と呼んでいます。



 

<キーワード> シマウマと人間の違い

 生物の生き残りのために有益なストレス・システムが、なぜ、人間の心身を傷つけることになってしまうのでしょうか。

 ロバート・サポルスキーは、『なぜシマウマは胃潰瘍にならないか』という本の中で、シマウマと人間の違いを述べています。シマウマは、ライオンに出会うとストレス反応が生じますが、ライオンから逃れて、休んでいるときや、水を飲んでいるときには、ライオンのことを忘れてしまって、平常の状態に戻ります。

 ところが、人間の場合、脳の機能がすぐれているので、ライオンが去ってもライオンのことを思い出します。
 ストレス反応というのは思い出しただけでも生じます。例えば、梅干しを思い出すと、酸っぱい感じがして唾液が出てきたりしますが、それと同じような状況です。脳が発達している人間は、目の前にライオンがいないのにライオンを思い出すことで、ストレス反応が起こってしまうのです。これは、下記で説明する「ルミネーション(反芻)」と呼ぶ現象と関連しています。





<キーワード> ルミネーション(反芻)による慢性化

 人間は、嫌なことを何度も思い出します。例えば、職場や学校で嫌なことがあったときに、その場でストレスが生じるのは、自然なことです。しかし、家に帰って、お風呂に入っているときや、ベッドに入ったときに思い出して、イライラしたり、息苦しくなったりすることがあります。ストレス要因が目の前にあるわけではなく、体はリラックスしているはずなのに、思い出して体がストレス反応を起こします。

 こうして何度も思い出す現象を「ルミネーション(rumination、反芻)」と言います。ルミネーションが繰り返されると、ストレスホルモンが出続ける状態が続いて、慢性ストレス状態となり、やがて疾患などに至ることがあります。
 ルミネーションは、うつ病との関係が深いという研究もあり、ルミネーションを防ぐことが重要とされます。

 なお、ルミネーションには、「リフレクション(reflection)」と「ブルーディング(brooding)」があります。リフレクションは、「熟考」というような意味で、過去のことを思い出して、その状況を熟考して将来に生かそうとするものです。「なぜ、あんな失敗をしたのだろうか」と考えて、次に失敗しないために思い出すというもので、プラスに働くことがあります。もう一方の、ブルーディングは「卵を温めて育てる」というような意味で、嫌なことを思い出して、嫌な感情をどんどん膨らませていってしまう現象です。ブルーディングは健康に悪影響を及ぼすと考えられています。





<キーワード> マインドフルネス

 嫌なことを思い出す「ルミネーション」が繰り返されると、ストレス状態が慢性化して健康障害につながる恐れがあります。

 「ルミネーション」を防ぐ方法の一つが、「マインドフルネス」です。マインドフルネスは、もともと仏教を起源とする東洋的概念ですが、認知心理学との類似性が高く、脳科学の観点からの効果も確かめられているため、欧米で注目されています。

 マインドフルネスは、「良い」「悪い」といった判断を加えることなく、瞬間瞬間にマインド(意識)を何かに集中的に向けている状況です。
 例えば、呼吸に意識を集中させたり、体の感覚に意識を集中させたり、といった方法があります。そうすると、意識が身体に向いているので、嫌なことを思い出しにくくなり、ルミネーションが起こりにくくなると考えられています。マインドフルネスの代表的な手法として、東洋的な瞑想や禅などが用いられます。

 アメリカ心理学協会によれば、マインドフルネスの効果は、ルミネーションの減少、ストレスの減少、ワーキング・メモリーの容量増加などが挙げられています(こちら)。





<キーワード> 脳のメモリーのリフレッシュ

 人間の脳は、コンピュータと似ていて、ワーキング・メモリー(作業領域)があり、そこで情報処理をしていると考えられています。コンピュータでアプリをたくさん立ち上げるとメモリが一杯になり働きが悪くなりますが、人間の脳も同じようなことが起こると考えられています。

 マインドフルネスというのは、脳のメモリーをリフレッシュするような働きをします。

 たとえば、嫌なことがあってストレスを感じていると、脳のメモリーは嫌なことで一杯になります。そんなときに、お腹がすいて、ふと、ご飯や食べ物のことを考えると、一瞬の間かもしれませんが、食べ物のことしか考えられなくなり、嫌なことがどこかに消えてしまうことがあります。注意を向ける対象が、「嫌なこと」から「食べ物」にスイッチングされたのです。

 何かに集中的に注意を向ける状態を意識的につくるのがマインドフルネスです。いろいろな方法がありますが、一番簡単なものは、呼吸に意識を向けるものです。目を閉じてゆっくりと深呼吸をしながら、入ってくる空気を意識し、出て行く空気を意識する、それだけです。

 練習して、呼吸に意識を集中させることができるようになると、呼吸に注意を奪われて、他のことをあまり考えられなくなり、脳のメモリーが少しリフレッシュされます。





<キーワード> 危険情報の記憶

 生物にとって最も重要な記憶は、食べ物の所在と、危険の記憶とされています。

 危険な出来事に遭ったことを忘れてしまうと、次に、同じ状況に遭ったときにすばやく対応できず、生き残りに支障をきたすことがあります。生き残る確率を高めるためには、危険な状況に出遭ったことをきちんと覚えている必要があります。

 危険なことをを経験すると、「感情」を伴う記憶として、そのときの状況とともに脳の中に刻まれると考えられています。「トラウマ」と呼ばれるような強い感情を伴う記憶が生じ、それが危険察知に役立ち、生物の生存を高めてきました。

 人間の場合は、脳が発達しているので、自分で記憶しているだけでなく、言葉によって、仲間や子々孫々にまで危険情報を伝えていきました。これが人間の生存確率を圧倒的に高めたと言われています。

 ところが、人間の場合、危険でない状況のときにまで、トラウマがフラッシュバックされて、何度も思い出されてしまうことがあり、日常生活に支障が出るほどに苦しい状況になることがあります。PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼ばれる状態です。





<キーワード> 「出来事」と「感情」の切り離し

 トラウマを思い出さないようにできるかというと、それはほぼ不可能です。そこで考えられているのが、「出来事」と「感情」のリンクを切る方法です。

 もともとPTSDは、ベトナム戦争に行った兵士に起こった現象として名づけられたものですが、現在、米退役軍人省(国立PTSDセンター)は、イラク帰還兵のケアに取り組んでいます。同省では、世界最先端のPTSD治療を研究しています。

 その一つの方法がバーチャル・リアリティによる訓練です。イラクを再現した「バーチャル・イラク」を3Dでつくり、ゴーグルをはめてその中に入ります。爆弾の爆発など、様々な出来事が生じます。しかし、爆発は起こるけれども、今いる場所は、アメリカ国内の快適なケア施設内であり、現実には何の危険もない場所にいます。トレーニングを繰り返すことによって、「頭の中にフラッシュバックすることは、バーチャル・リアリティの映像と同じで、架空のものに過ぎないんだ」ということを学習していきます。
 こうして、イラクでの出来事を思い出すけれども、感情は大きく反応しない状況をつくっていこうとしています。

 上の写真のトラを見てください。怖いと感じる人もいるかもしれません。しかし、「単なる写真じゃないか」とか「画面が光っているだけじゃないか」と捉えることもできます。そういう見方をする人は、怖いといった感情は生じていないはずです。同じ映像を見たり、思い出したりしても、感情を伴うこともあれば、感情を伴わないこともあります。
 トンチで有名な一休さんは、屏風のトラを「さあ、ここに出して下さい」と言いましたが、絵に描いたものは、あくまでも絵に描いたもの。架空のものは架空のものです。

 人間に「思い出すな」と言っても無理な話です。しかし、感情をあまり伴わないようにすることは不可能ではありません。「感情さえ伴わなければ、嫌な出来事を何回思い出してもまったくかまわない」という現実的な発想による対処法です。





<キーワード> サブ・ボーカライゼーションの妨害(マスキング)

 ルミネーションを消す、のではなく、妨害するという方法もあります。

 人間は本を読んだり、何かを考えたりしているときに、頭の中で自分の声をつぶやいていることがあります。それを「サブ・ボーカライゼーション(subvocalization)」などと言います。サブ・ボーカライゼーションは、記憶や思考を促進する方向に働くと考えられています。この頭の中のつぶやきを妨害(マスキング)することで、嫌なことを思い出している思考状態を妨害し、記憶の強化を妨げるのです。

 例えば、嫌なことを思い出したときに、何かを唱えたりすることも、サブ・ボーカライゼーションを妨害することにつながります。

 嫌なことを思い出したら、別のことでその思考を邪魔してやるということです。お経や、マントラなどを唱えることも、嫌な思考を追い出す効果を生むでしょう。自分なりのおまじないの言葉を作っておいて、頭の中で唱える方法もあります。





<キーワード> 「般若心経」と「認知心理学」

 西洋で人気のある認知心理学は、東洋の仏教と極めて似た考え方です。例えば、「般若心経」の中に出てくる「色受想行識(五蘊)」は、脳の情報処理システムそのものと言ってもいいものです。また、「眼耳鼻舌身意」は人間の知覚を表しています。

 認知心理学では、「眼(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)、身(触覚)」による外部からの情報入力の研究が主体でしたが、今は、「ルミネーション」など、思い出すことによる、内部入力に焦点が当てられるようになっています。つまり、「眼耳鼻舌身意」の「意」に相当するものです。

 東洋の瞑想には、体の感覚や、味覚などに意識を集中させるものがあります。おそらく「眼耳鼻舌身意」のうち「眼耳鼻舌身」の五感に意識を集中させ、それらの情報処理で頭の中を満たすことによって、思い出すことによる「意」の要素が入り込む余地をなくしているのだろうと思われます。脳の中で嫌なことを思い出す余地が減れば、気持ちは軽くなりますし、ストレスの慢性化を避けられます。

 西洋で、マインドフルネスという仏教を基にした対応法が盛んに研究されているのは、仏教の知恵には、認知心理学や脳科学を包含したような深い概念が存在していることが影響していると考えられます。認知心理学の研究が進めば進むほど、マインドフルネスなどの東洋系の知恵が注目されるはずです。






<キーワード> オペレーショナル・リスク

 ストレスには大きく分けて2つのリスクがあります。

 一つは、個人として知っておくべきリスクです。ストレスは体や心の健康状態を低下させ、免疫機能を低下させます。そのままにしておくと、体の病気やうつ病などにつながることがあります。

 もう一つは、仕事をしている人がプロとして知っておくべきリスクです。ストレスは脳の情報処理に影響を与え、認知エラーを誘発します。代表的なものは「状況判断ミス」です。例えば、高い安全性が求められる航空、宇宙、軍事、医療などの分野では、一つの判断ミスが重大な結果を招くため、ストレス対策が重視されています。

 認知エラーとしては、状況判断ミスのほかに、見間違い、見落とし、聞き逃し、やり忘れ、入力ミスなどもあり、いずれも重大な結果につながることがあります。

 こうした業務に影響するリスクは「オペレーショナル・リスク」と呼ばれることがあります。




 プロとして最低限知っておいたほうがよいストレス関連知識は、次の2つです。

 一つは、「トンネル・ビジョン」、もう一つは「ファイン・モーター・スキル」です。





<キーワード> トンネル・ビジョン

 ストレスがかかっているときに起こる代表的な認知変化は、「トンネル・ビジョン」です。トンネルの中から外をのぞいたように、視野が狭窄化します。

 航空機のパイロットは、緊急時になると計器パネルの全体を見渡さなくなり、視覚的にスキャンする範囲が狭くなることが知られています。1972年にはパイロットたちが、計器盤の小さなランプの球切れに気をとられ、高度の低下に気づかずに、墜落した事故が起こっています。

 ストレス下では、視覚だけでなく、注意力(アテンション)のトンネル化も起こります。周辺情報への注意が行かなくなり、中心部分にトンネル化(集中化)していきます。

 トンネル化が起こる理由は、ストレス下では脳が多くの情報処理をしなければいけなくなるため、情報処理がオーバーフローしないように、一部のタスクをシェディング(削ぎ落とし)し、処理を制限しているためと考えられています。





<キーワード> 注意力のトンネル化

 日常生活でもトンネル化現象は起こります。代表例は、自動車運転中の携帯電話です。視野が携帯電話にひきつけられてトンネル化し、注意力も携帯電話に集中してトンネル化します。そのため、周囲の状況に注意が向かず、危険な状況を招くことがあります。

 ハンズフリーの通話であっても注意力のトンネル化が起こることがわかっており、多くの国で運転中の携帯電話は禁止されています。 

 同様のことが、ストレスによっても生じます。例えば、車でどこかに出かけるときに、出発が遅れて遅刻しそうになり、焦りやストレスを感じていると、「早く行かなきゃいけない」ということしか考えられなくなります。そうすると、周囲の状況に注意が行かなくなり、横から飛び出してきた車に気がつかなかったりして、事故につながることがあります。

 ストレスによる注意力のトンネル化は、自動車事故だけでなく、航空事故、産業事故など、様々な事故につながっています。





<キーワード> ファイン・モーター・スキル(微細運動能力)

 強いストレスがかかると、「急性ストレス反応」が生じます。左欄に記したように、戦うか逃げるかの反応が起こるため、筋肉のほうに血液が必要とされ、手先に血液があまり行かなくなります。手先に血液が行かなくなるのは、戦ったときの出血を抑えるためとも考えられています。

 手先に血液が行かなくなることによって、手先の細かい動き(ファインモーター・スキル)が低下します。

 例えば、緊急事態が発生して、救急車を呼ばなければならないとき、ストレスで手先が動かなくなったり震えたりして、電話の数字をうまくタッチできないことがあります。「119」を押そうとしても、指先がうまく動かなくて、なかなか押せません。緊迫した状態であればあるほど、細かい動きができなくなります。

 様々な機械がタッチパネル式になってきている時代ですから、ストレスによる影響を考慮した対策が求められています。





<キーワード> 脳のキャパシティ

 ストレスがあると、状況判断などの認知能力が低下し、エラーが起こりやすくなります。

 ストレスによって認知能力が低下するメカニズムは、脳がリソース不足になるためと考えられています。これは、ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンによる「リソース・モデル」が基盤となっています。脳の資源(アテンションの量、ワーキング・メモリーの量)には限界があるという考え方です。

 ストレスの処理に脳の資源が振り向けられると、その分だけ、タスクに脳の資源を配分できなくなります。脳のキャパシティが減るために、処理できる情報量が減少して、認知能力が低下するという考え方です。
 例えば、人間関係でストレスを感じていると、その人間関係のことが気になって頭の中がいっぱいになり、仕事に意識が向かなくなって、ミスをしたり、能率が低下したり、判断を間違えたりすることがあります。

 なお、こうした認知能力の低下を防ぐ方法も研究されています。1つは、タスクに習熟することです。「目をつぶっていてもできる」というほどに習熟していると、脳のワーキング・メモリーをほとんど使わずにタスクの処理ができます。自動化という方法です。ベテランの人は、ストレスがあっても、ほとんど能力を低下させずにルーティンの仕事なら難なくこなせます。
 このほか、事前の入念な「準備」という方法もあります。

 人間は、リソースが減っても、エフォート(努力)を増やしたり、ストラテジー(戦略)を変えたりして補うことができるため、ストレスによって一律に認知能力が下がるわけではありませんが、何も対応をしないと、エラーは起こりやすくなります。






<キーワード> エラー・カスケード

 「エラー・カスケード」とは、ヒューマン・エラーの専門家として有名なジェームズ・リーズンのコンセプトです。カスケードとは「連なった滝」のことです。エラーが連なった滝のように連鎖していくことを表しています。

 一つのエラーをすると、そのエラーによって状況が変化します。そうすると、次のエラーが生まれやすくなります。エラーが連鎖して、被害が拡大していきます。

 エラーの連鎖が起こらないようにするには、できるだけ上流で対応することが重要です。日々のストレスをためないようにていくことも、その一つです。





<キーワード> ヒューマン・ファクター

 現代社会は、コンピュータ化、機械化、システム化の進んだ高度なテクノロジー社会です。人間とテクノロジーが共同して社会を支えていると言えます。

 機械の故障は社会に大きな被害をもたらしますので、機械のエラー防止、メンテナンスはとても重要です。その一方で、機械を運用する人間のほうも、エラーを生じることがあります。

 テクノロジーが進化すればするほど、人間側の要因(ヒューマン・ファクター)が重要になってきます。それを顕著に示しているのが、下記の航空宇宙分野、防衛分野です。






<キーワード> 航空宇宙心理学

 1960年代、70年代の宇宙開発は、米ソの熾烈な競争でしたが、技術面ばかりが重視されていたため、予期せぬ事態がいくつも発生しました。

 アメリカのNASA(航空宇宙局)は、宇宙飛行士のスケジュールを詰め込みすぎていました。ある日、宇宙ステーションの飛行士が地上管制官の言うことを一切聞かなくなり、ストライキをするということが起こりました。
 ソ連では、宇宙飛行士がどうしても地球に戻りたくなって、期間を早めて戻ってくることが起こりました。
 初期の宇宙開発では、米ソとも、テクノロジーに重点を置きすぎていて、ヒューマン・ファクターがあまり考慮されていなかったのです。

 「ヒューマン・ファクターを軽視すると、ミッションは成功しない」という認識が広がり、ソ連を中心に、1970年代くらいから宇宙心理学というものが研究されて発展してきました。その後、ソ連(ロシア)を追いかける形でNASAも研究に取り組みました。

 近年は、「ストレス」と「認知」の関係についても熱心に研究されており、下記のレポートなどにまとめられています。本ページの情報のネタ元は、大半が下記の2つの資料によるものです。

   ・「ストレスと認知とパフォーマンス」(NASA)
   ・「ストレスと認知」(NASA助成研究)

 これらのレポートが興味深いのは、最先端のストレス科学、認知科学がまとめられているのですが、内容の分類は古代の仏教の「受想行識」ととても似ている点です。



USS Vincennes (CG-49) Aegis large screen displays

<キーワード> TADMUS(イージス艦の心理学)

 日本にも配備されていますが、イージス艦という高度な防衛システムがあります。イージス艦は、数十個の飛来物をミサイルで撃ち落せる、極めて優れた防衛システムです。ところが、あまりにも技術が進みすぎて、人間の認知能力を超えていました。機械は同時に数十個のミサイルを発射できますが、人間の脳は、「1度に1つ」のことしか判断できません。「撃つか撃たないか」の判断を同時に数十個できる艦長は残念ながらいません。

 初期の米イージス艦の艦長たちは、「なぜかは説明できないけれども、ものすごく負担を感じ、ストレスを感じる」という声を漏らしていました。それは、システム設計がされた1970年代には、ヒューマン・ファクターや心理要素をほとんど検討していなかったためだということが、後からわかりました。

 アメリカによるイージス艦の実戦配備後の1988年には、海での戦闘をしながら、空からの飛来物に対処するという状況で、判断ミスが起こりました。強いストレス下に置かれた米海軍クルーたちが、イランのジャンボ機を戦闘機と誤認して、民間人290名を死亡させてしまったのです。イランはすぐに報復を宣言し、あわや全面戦争になりかねない状況を招きました。

 事故防止のために、米海軍はTADMUS(Tactical Decision Making under Stress、ストレス下の戦術的意思決定)の研究を始めました。イージス・システムを再設計・運用するための心理学的研究ですから、いわば「イージス艦の心理学」です。

 高度なテクノロジーを使う現代社会では、テクノロジーが人間の能力を超えてしまうことがあります。テクノロジーを利用する人間側の要因、つまりヒューマン・ファクターを重視しないと、重大なエラーが生じることがあります。「クルーのストレスから全面戦争に」というシナリオがありうるのです。

 イージス艦の心理学は、「ストレス下での判断」、「ストレス下での意思決定」の先駆けとなった研究で、今後は、危機管理などの各分野で幅広く応用されていくでしょう。





<キーワード> 石器からコンピュータに

 石器時代には、ストレスでミスが起こっても、大した問題ではありませんでした。せいぜい、手元の作業を失敗する程度でした。

 今は、道具が進化し、大きなパワーを持つコンピュータ・ネットワークを誰もが使っています。ストレスでボーっとしていて、パソコンの操作をちょっと間違えただけで、顧客情報や個人情報などが世界に流出してしまうこともあります。

 産業機器や医療機器も、タッチパネル式に変わってきており、イライラや焦りで、タッチパネルを押し間違えただけで、死傷事故が起こることもありえます。

 ストレスによる認知機能への影響そのものは、石器時代から大して変わっていません。しかし、現代社会では、大きなパワーとスピードを持つ道具を使っているため、ほんのちょっとしたミスが、甚大な結果につながってしまうことがあります。

 文明が進化して、テクノロジーが発展すればするほど、ヒューマン・ファクターの観点がよりいっそう重要になってきます。高度なテクノロジーを持つ社会を、より安全に、より有効に機能させるためには、ストレスへの対応も欠かすことはできません。










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